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CGMを糖尿病診療に活かすCGMを糖尿病診療に活かす

TOPICS
西村 理明 先生
まつもと糖尿病クリニック 院長
松本 壮一 先生
糖尿病の診断や経過観察において、血糖コントロールの指標には主にHbA1cが用いられている。しかし、HbA1cのみで日々の血糖変動を把握することは困難である。近年、持続血糖モニター(CGM)が注目され、本邦でも2010年に保険適用となった。さらに、2018年の診療報酬改定においてCGMを算定する施設基準が緩和され、糖尿病専門医1名の診療所でもCGMの導入が可能となった。
そこで今回は、いち早くCGMを導入し、適切な患者指導と治療法の選択を実践されているまつもと糖尿病クリニック 院長の松本壮一先生に、CGMを糖尿病診療にどのように活かすかをお伺いした。

CGMによる血糖値の連続的な測定が可能に

糖尿病治療における血糖コントロールの指標として、HbA1cと血糖値が主に用いられている。特にHbA1cは食事の影響を受けないことから、健康診断などにおいても広く用いられている。しかし、HbA1cは検査時の過去1~3ヵ月間の血糖値の平均を反映する指標であることから、日々の細かな血糖変動は必ずしも検査結果に反映されない。

1999年、持続血糖モニター(CGM:Continuous Glucose Monitoring)が米国で発売された。CGMは、血糖値と相関するとされる間質液中の糖濃度を測定し、血糖値変動を推測するもので、本邦においては、西村理明先生(東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授)らのご尽力によって、2009年に使用が認可され、翌2010年には保険適用となった。

緩和されたCGM導入の施設基準

図1:血糖自己判定 保険算定要件の変更点

CGMが保険適用となった当時、CGMの保険算定要件における施設基準として、「(1)糖尿病の治療に関し、専門の知識及び少なくとも5年以上の経験を有する常勤の医師が2名以上配置されていること」「(2)持続皮下インスリン注入療法を行っている保険医療機関であること」の2項目を満たすことが必要とされていた。

しかし、2018年4月の診療報酬改定において、(1)の糖尿病専門医師数が2名から1名に変更され、糖尿病専門医が1名の当院でもCGMの導入が可能となった。(2)については、持続皮下インスリン注入療法(CSII:Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)が最低1名でも導入実績を得ていれば届出を提出することができる(図1)。

現在、CGMが保険適用となる患者は、「ア 治療方針策定のために血糖プロファイルを必要とする1型糖尿病患者」と「イ 低血糖発作を繰り返す等重篤な有害事象がおきている血糖コントロールが不安定な2型糖尿病患者であって、医師の指示に従い血糖コントロールを行う意志のある者」である。

CGMの革新的な機器が登場

図2:2型糖尿病患者を対象とした食後高血糖に関する意識調査

CGMが保険適用となった当時の機器は、「メドトロニックiPro®2」(日本メドトロニック株式会社)であった。最近では、「FreeStyleリブレPro」(アボット ジャパン株式会社)が2016年12月に発売され保険適用となっている。これは、最長14日間の血糖プロファイルの測定が可能なデバイスであり、患者に装着した使い捨てのセンサーから、複数の患者に使用可能なReaderで測定結果を読み取り、グルコース変動レポートが簡単な操作で作成されるという、CGMにおける革新的な機器である(図2)。

さらに、CGMが保険適用になった当時に比べると非常に安価であり、コストの面においてもより導入しやすくなった。

CGM導入による患者のメリット

当院では、施設基準が緩和された2018年4月からCGMを導入し、すでに多くの患者の血糖プロファイルを測定している。CGMの導入前は、HbA1cによって患者の血糖プロファイルを漠然としたイメージでとらえており、日々の血糖変動を把握することはできなかった。しかし、CGMを導入したことで患者個々に血糖コントロールの問題点などHbA1cの経過観察だけでは見えなかった様々なことが明らかになり、それが適切な患者指導・治療につながることを強く実感している。

患者にとってもCGMのメリットは大きい。HbA1cのみで経過観察している場合、患者が食事の改善や日々の運動など積極的に治療に参加しても、どの程度の成果が得られたかがわからなかった。しかし、CGMによる血糖プロファイルを医療者と一緒に見ることで、食事など生活面での問題点を把握することができ、また服薬の重要性も理解いただくことができる。さらに、積極的に治療に取り組んだ成果を自身の目で見ることで、治療に対するモチベーションの向上にもつながる。

具体的に、当院ではセンサー装着の1週間後に再受診していただき、過去1週間の血糖プロファイルを確認している。その際に、患者が記録した1週間の食事内容と血糖プロファイルを照らし合わせることで問題点を詳細に把握することができ、食事における改善すべきポイントがより明確となることから、患者自身の理解度も深まる。たとえば、食後血糖値が高い患者では、何を食べると食後に血糖値が上昇するか、何を食べると血糖上昇は軽微かを細かく把握することができる。また、服薬コンプライアンスと血糖変動の関係も明らかになることで、服薬の重要性をご理解いただける。そして、さらに1週間後に血糖プロファイルを確認すると、多くの患者は明らかな改善が見られ、実際にわずか1週間と短期間であるにもかかわらず、8%台だった推定HbA1cが7%を下回るというように劇的に血糖値が改善する患者に遭遇することも決して珍しいことではない。

このようにCGMで血糖プロファイルを確認することで、食事などの生活面、服薬コンプライアンスなど患者個々の問題点と改善のためのポイントが描出されるというように、患者にとってのメリットは非常に大きい。

CGM導入で可能となる適切な治療薬の選択

「CGMの結果と患者さんの食事の状況を一緒に確認することで、患者さんに寄り添いながらきめ細かな指導をしています」(看護師 斎藤晴子さん)。CGMの導入によりスタッフも治療効果が実感でき、モチベーションの向上につながっている。

CGMを導入することによって、患者個々に適した治療薬の選択が可能となる。たとえば、炭水化物の摂取量がさほど多くないにもかかわらず食後の血糖値が非常に高いような患者には、その患者に適した速効型インスリン分泌促進薬/食後血糖改善薬配合剤など、食後高血糖の改善効果が期待できる薬剤を処方し、さらに血糖プロファイルを確認して治療効果を評価している。CGMによって、より適切な患者指導と確実な治療効果が期待できる薬物の選択ができるようになるなど、医師のメリットも大きい。

また、医師だけでなく、看護師などの医療スタッフのメリットも大きい。当院では、食事を含めた生活指導は主に看護師が対応しているが、CGMによって個々の患者の課題が明らかになることで、よりきめ細かく、具体的な指導ができる。そして、指導に沿った生活習慣の改善によって減量が進み、あわせて服薬によって血糖値が劇的に改善することで、患者からの感謝の言葉を受けることも多く、さらに医療スタッフのモチベーション向上につながっている。

CGMによって見えてきた食後高血糖の問題

CGMを多くの患者に導入したことで血糖プロファイルでの食後高血糖の存在を今まで以上に認識することができた。

例えば、朝1回のみ超速効型インスリン並びに持効型インスリンを施行中の方で、空腹時血糖は100~110mg/dLでありながら、HbAlc8%前後でなかなか改善しないような方に対してCGMを施行した。その結果、CGMにて想定以上の各食後の高血糖を認めたため、超速効型インスリンと速効型インスリン分泌促進薬/食後過血糖改善薬配合剤の併用投与によりHbAlcが改善し、現在も良好な血糖コントロールを維持している。

空腹時血糖とHbAlcに解離があるような症例では、可能ならばCGMを施行し血糖プロファイルを確認することが望ましいだろうし、CGMの施行が難しい状況であるならば食後血糖を意識した内服薬の追加を試してみるのもよいのではないかと思われる。

望まれるCGMの普及

CGMのメリットは非常に大きく、これからの糖尿病診療において不可欠な医療デバイスと考えている。さらに、患者個々に即した適切な治療法や治療薬を選択することは、確かな治療効果につながり、医療費の軽減にもつながることから、医療経済におけるメリットも大きいと思われる。

CGMが糖尿病患者の診療に携わる多くの医療施設に導入され、広く普及することが望まれる。

グルベス®配合錠【効能・効果】
<効能・効果に関連する使用上の注意>
2.
本剤を2型糖尿病治療の第一選択薬として用いないこと。
3.
原則として、以下の場合に本剤の使用を検討すること。
(1) 既にミチグリニドカルシウム水和物として1回10mg、1日3回及びボグリボースとして1回0.2mg、1日3回を併用し状態が安定している場合
(2) ミチグリニドカルシウム水和物として1回10mg、1日3回の単剤の治療により効果不十分な場合
(3) ボグリボースとして1回0.2mg、1日3回の単剤の治療により効果不十分な場合
【使用上の注意】
1.
慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(3) 他の糖尿病用薬(特にインスリン製剤)を投与中の患者[低血糖のリスクが増加するおそれがある。]

グルベス配合OD錠のDrug Informationはこちらをご参照ください。

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