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One-Side Report

専門性を備えた包括的医療でCKDの地域医療連携に取り組む 医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院腎臓病センター(東京都板橋区)

超高齢社会の到来とともに加齢による慢性腎臓病(CKD)が増加、近年はこれらを背景に急性腎障害(AKI)も急増しており、その受け入れ先となる透析施設が少ないことが全国的な課題となって、腎臓病センターのあり方も問われています。そこでこのヒントを求め、板橋中央総合病院 院長補佐の塚本雄介先生に、CKDの予防から治療まで包括的医療に取り組んでいる腎臓病センターの活動について伺いました。
【開設日】
昭和31年3月1日
【病床数】
569床(透析ベッド:昼間50床、夜間30床)
【職員数】
1,283名(平成30年12月31日現在)
【診療科】
内科(総合診療内科)/腎臓内科/血液内科/リウマチ科/糖尿病内科/脳神経内科/呼吸器内科/循環器内科/消化器内科/耳鼻咽喉科/外科/消化器外科/呼吸器外科/心臓血管外科/整形外科/脳神経外科/泌尿器科/産婦人科/リハビリテーション科/麻酔科/放射線診断科/放射線治療科/皮膚科/形成外科/美容外科/眼科/小児科/精神科/病理診断科/腎臓外科/移植外科/人工透析内科/腫瘍内科/救急科
【URL】
https://www.ims-itabashi.jp/

正確な診断と予後予測に基づいた慢性腎臓病の治療をチームで提供

地域の基幹病院のひとつである板橋中央総合病院の腎臓病センターでは、内科と外科が緊密に連携して、慢性腎臓病(CKD)の予防から治療まで包括的医療の実践に取り組んできました。特にここ数年は人員を含め診療体制をさらに強化し、「この分野の診断・治療において当センターで対応できないことはありません」と、長年にわたり同センターを率いてきた塚本雄介先生(院長補佐・内科統括部長)は胸を張ります。

診断の分野では、病理診断を得意とする腎臓内科診療部長の金子修三先生を中心に、年間40件余りの腎生検を行い、正確な診断と予後予測に基づいた治療を提供しています。「2021年4月からは腎病理学の第一人者として知られる長田道夫先生(筑波大学前教授)も加わり、国内トップクラスの診断レベルを誇ります」(塚本先生)。

治療の分野で増強されたのは腎移植です。同院の腎移植は東京女子医科大学と連携して開始され、この分野で豊富な経験と実績を持つ中島一朗先生を中心に取り組んできました。20年4月には新スタッフを増員、中島先生を現センター長とした総勢7名の医師による「臓器移植センター(移植外科・腎臓外科)」を新設しました。「20年には献腎移植を含め年間29例の腎移植を実施しており、今年はそのペースを上回る週1例の実施件数となっています。腎移植体制が強化されたことにより、慢性腎不全の患者さんに待機的腎移植の選択肢を提示できるようになりました」(塚本先生)。

腎臓内科は若手医師にも人気の診療科で、専門医の育成も重要な仕事のひとつ(左)。腎臓外科は20年4月に新たなメンバーを迎え入れ、パワーアップした(右)。
「小児腎臓病の専門医が揃っていることも特筆すべき点です」と塚本雄介先生はあらゆる世代の腎臓病に対応できることを説明する。

血液透析の役割と機能を再構築し外来から入院透析優先にシフト

外来透析は通院できる患者に限定し、入院透析優先の体制を整えている。

腎臓病センターは多職種チームによる診療が基本。病棟の回診には管理栄養士、リハビリ職も同行し、生活全体をチームで支える。

透析医療の分野では、血液透析の役割と機能を再構築することに積極的に取り組んでいます。近年、高齢化やCKD・糖尿病の増加などを背景に急性腎障害(AKI)が急増しており、AKIの緊急入院に対応できる血液透析施設の確保が全国的な課題となっています。それは同院のある地域でも例外ではありません。同センターはこのニーズに応えるため、送迎を必要とする透析患者を関連および近隣の透析クリニックにお願いすることで、入院用のベッドを確保し、AKIの緊急入院に対しても最大40名までの受け入れが可能になりました。

「入院透析が行えることは当センターの最大の強みで、隣接する北区、練馬区や足立区に加え、埼玉県、群馬県、栃木県など広範囲から患者さんを受け入れるようになりました。当院は専門性の高い急性期医療を展開しているため、合併症を併存する透析患者さんの紹介が特に多いです。より多くの医療機関に活用してもらえるよう周知していきたいと考えています」と塚本先生は意欲的です。

さらに20年4月には、血液透析が行えない高齢の透析患者に対応することを主な目的として腹膜透析も開始しました。同時期に開設された「腎代替療法選択外来」では、待機的腎移植とともに血液透析に代わる選択肢のひとつとして提示しています。塚本先生は「在宅医療とうまく組み合わせることで、透析患者さんが最後まで自分らしい人生を全うすることを支えられる」と、血液透析の代わりに腹膜透析を導入する“PDラスト”に期待を寄せています。

腹膜透析導入初年となる昨年の新規導入件数は10例、今年は月1例程度で導入が進んでおり、「腹膜透析は外科のバックボーンがある透析施設でなければ取り組めないため、当センターが挑戦する価値は十分にあります。今後は透析医療に詳しい訪問看護師やヘルパーなどの人材育成を含め、ひとつのモデルを作っていくのも私たちに与えられた重要な仕事になるでしょう」(塚本先生)。

どの診療科でもCKDが増える中安全な治療の観点から多科連携を推進

腎臓病センターは5年前から感染対策を重点的に行ってきており、COVID-19にも迅速に対応。感染した透析患者も積極的に受け入れた。

腎臓病ガイドラインに関する国際機構KDIGO(Kidney Disease:Improving Global Outcome)の主要メンバーとしても知られる塚本先生は、とりわけCKDガイドラインの作成と普及啓発に注力してきました。同院のある板橋区では塚本先生たちが中心になって、2016年に「CKD地域医療連携会議」を設置。地域の大学病院、総合病院、診療所が連携し、健康診断や人間ドックをきっかけに明らかになったCKD患者をできるだけ早く専門医療機関に紹介する連携体制を構築してきました。

「当センターではCKDステージ4の段階まで、紹介医(診療所医師)とペアの2人主治医制で診療を行っています。当センターの専門医が3ヵ月に1回のペースで診察・検査を行い、紹介医に検査結果と評価をフィードバックして、日常の診療に役立ててもらっています。増え続ける地域のCKD患者に早期から対応するには診療所医師の力が欠かせず、その知見と技術を共有していくうえでも2人主治医制は有効です」と塚本先生は、地域医療連携に手応えを感じています。

また、診療所医師から依頼を受けて管理栄養士がCKDの患者に栄養指導を行うこともあり、同センターで結成されている多職種チーム(看護師、管理栄養士、リハビリ職、医療ソーシャルワーカーなど)は地域医療における後方支援の役割も担っています。

一方、どの診療科にも基礎疾患としてCKDを抱える患者が急増しているため、安全な治療の観点からも、院内外を問わず多科連携が求められています。近年、塚本先生が地域において重点的に連携を推奨しているのが整形外科です。鎮痛薬や骨粗鬆症治療薬など整形外科で使用する薬剤には腎機能を悪化させてAKIを起こしやすいものがあるからです。

「そのほか抗菌薬や造影剤にも注意する必要があります。院内では造影剤を最も使う循環器科に加え、診療放射線技師との連携も強化して、造影剤を使用する患者のGFRを必ず確認してもらうよう徹底しています」(塚本先生)。

このようにさまざまなCKD対策が必須である中、同センターのように予防から治療まで包括的医療が行える医療機関が少ないのが現状です。板橋中央総合病院腎臓病センターは、地域においてなくてはならない専門性を備えた社会資源として、患者家族から、そして医療機関からもさらに頼られる存在となっていくでしょう。

※WEBにて取材を行いました(2021年6月)。

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