KISSEI
糖尿病患者さんを
支える“ひと” 1
糖尿病診療に携わるメディカルスタッフの方に、患者さんの療養支援で心がけていることや
コミュニケーションの取り方、患者さんが受診したくなるような工夫、心に残った患者さんとの
エピソードなど、日頃の実臨床での様子を伺いました。
  • ―― 糖尿病看護認定看護師の立場から

    吉田 照美 先生

    岡崎市民病院

    看護局 患者支援部門 看護長補佐
    糖尿病センター 副センター長

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患者さんとのコミュニケーションのかたち

まっさらな気持ちで

とにかく患者さんを叱責してはいけないと痛感しています。叱るとその後は一切話を聞いてくれなくなりますね。コミュニケーションの基本はどれだけ相手の話を聞け るかだと思います。どんな気持ちでいるのか、何を話したいのだろう、そんなことを考えて患者さんに向き合っています。

正直、話を聞いていてイラッとすることもあります(笑)。私も気持ちがゆれることはあるし、気分が良いときも悪いときもある。けれども、自分勝手でわがままな人と決めつけないようにしています。

ある一面だけを見て判断しないように、自分の考えを押しつけることなく、患者さんの思いを聞いていくのです。話をよく聞くと、身勝手な言動の裏で実は困っているということに気付きます。患者さんを理解するにはそんな関わり方がうまくいくと思います。

自己管理能力に年齢は関係ない

亡くなった患者さんが残したメモをご家族に見せていただいたことがあります。それはインスリンの自己注射の方法を覚えるために、88歳の患者さんが入院中の食事箋の裏に書いたものでした。「1.キャップ ハズス、2.消毒スル……8.ポンポンタヽク……」と注射の手順が書かれていました。2枚にわたりていねいに清書もされていて、こうやって覚えていたのだなと感動しました。

ほかにも90歳の患者さんで「前回、朝のインスリンを減らしたから昼の血糖が高い。朝のインスリン量を増やしたほうがいいんじゃないですか」と先生に尋ねている人もいました。責任インスリンを理解していないと出てこない発言ですよね。お二人とも真面目で勤勉だと感じます。高齢者だから自己管理できないなどと、医療者側が思い込んではいけないとすごく実感しました。

大人だって褒められたい

COVID-19対策のため今は外していますが、以前は外来の待合室に患者さんが書いたセルフモニタリングの記録などをいくつも掲示していました。内容は食事・間食、活動、体重、気持ちなど患者さんごとに多様です。この掲示板を見ると患者さんたちがいろいろな工夫をして糖尿病とうまく付き合っていることがわかりました。

それぞれの掲示物には「文字の色を変えていてわかりやすいですね」など、私もコメントを付けていました。患者さんに「あなたの記録はとても参考になるので貼ってもいい?」と聞くと、皆さんまんざらでもない感じでOKしてくれました。自分の取り組みが認められたこと、ほかの人の参考になることがうれしいのだと思います。

糖尿病連携手帳も活用していて、目標を書く欄は患者さん自身に記入してもらいます。患者さんには、人に言われたからやるのではなく自分のこととしてやってもらいたいのです。それに対して、私たち医療者は「がんばっていますね」といったコメントを書いたり、かわいいスタンプを押したりして患者さんの行動を承認しています。看護師だけでなく、いろんな職種のスタッフがメッセージを書いています。こういうことが大事だと思います。

そのほかに、血糖コントロールが良好になった人や転院される患者さんには、手作りの賞状を渡したりもします。とても喜ばれるんですよ。大人になると、褒められることってなかなかないですしね。

目標を一緒に決める

治療中に病院へ来なくなってしまう患者さんもいますが、その理由は様々です。先生に良くなりましたねと言われたことでもう治ったと勘違いしてしまった人もいれば、血糖コントロールがうまくいかなくて先生に申し訳ないからという人、お金がなくて治療を続けられないという人も結構多いですね。

治療を続けるためにも、治療の先に何を求めているのか、何のために血糖コントロールをするのかを患者さんと医療者相互で認識する必要があると思います。それには、患者さんの価値観を大事にして治療の目標をどこに設定するかを一緒に考えていくことが大切だと思っています。たとえば、単純に先生に褒められたいという人もいますし、孫が結婚するまでは元気でいたいとか、東京オリンピックを見るまではがんばるなどです。できることからちょっとずつ進めていきましょうと患者さんとは話しています。

患者さんに行動変容の兆しがあったら「待ってました!」という感じ。絶対にそのタイミングを逃してはいけないんです。受診を中断していた患者さんが久しぶりに来院したら、「どうして来なかったの? ダメじゃない」ではなく「来てくれてうれしい、よかった!」と言って喜びます。病院に行くと「叱られる」のではなく、「褒められる」「話を聞いてくれる」「頼りがいがある」と思ってもらうことが大切です。

(第3回につづきます)