KISSEI
糖尿病患者さんを
支える“ひと” 1
糖尿病診療に携わるメディカルスタッフの方に、患者さんのより良い療養支援のための
スタッフ同士の連携やコミュニケーションの工夫について伺いました。
  • ―― 糖尿病看護認定看護師の立場から

    吉田 照美 先生

    岡崎市民病院

    看護局 患者支援部門 看護長補佐
    糖尿病センター 副センター長

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力を合わせて患者さんを支える ― チーム医療、看看連携

成功体験がチーム力を上げる

多職種のスタッフが患者さんに積極的に関わることができるのは、当院の糖尿病療養支援チームに「患者さんのためにどうすべきか」という明確な目標があるからです。話をしやすく風通しがよいチームなので、スタッフ全員が自発的にいろいろなことを企画提案しています。それぞれが力を最大限に発揮できる環境です。それが患者さんへの質の高い支援にもつながっていると思います。

日本糖尿病療養指導士(CDEJ)を目指すスタッフも多く、院内からCDEJが生まれています。去年資格を取ったスタッフが今年取得を目指すスタッフのレポートを添削し、それをさらに先輩が助言するというようなチームで応援する雰囲気が自然にできあがっています。こちらから資格を取るように言っているわけではないのに、熱心でうれしいですね。

また、糖尿病関連の学術集会では医師だけでなく私たちメディカルスタッフも、毎年必ずチームの取り組みや、看護実践の成果を発表するようにしています。こういった発表を当院では病院が成果として認めているので、CDEJの資格を活かした仕事ができる環境がさらに整っていきます。

私のチームでの役割はスタッフが仕事をしやすい環境をつくってみんなの意欲を高めること、そしてみんなの仕事の成果を院内で認められるようにすることです。がんばったスタッフにはその健闘を称えたくて、賞状を渡しています。メダルも作って医師と一緒に表彰したりしています。すごく喜ばれるので私もうれしいです。こうしたことがスタッフにとって成功体験となり、チーム力を上げていくのだと思います。

クリニック訪問でわかったたくさんのこと

2019年頃から慢性心不全看護認定看護師と一緒に地域のクリニックを訪問して、看護師を対象に勉強会を行っています。私は糖尿病患者さんへの接し方、支援の方法などを伝えています。また、看護師同士がざっくばらんに何でも話せる茶話会のようなこともしています。コロナ禍があって茶話会はまだ1回しかできていないのですが、その時は90分間があっという間に感じるくらい盛り上がりました。

活動を通じて私が感じたのは、クリニックの看護師はスタッフが多い病院にくらべると自分の看護が適切かどうかの評価を受ける機会や勉強の場が少なく、もっと看護について話せる仲間がほしい、勉強したいという強い思いがあることです。だから、茶話会でクリニックの看護師が集まって日々の悩みや気持ちを共有するだけでも前に進める、明日からがんばろうと思えるようです。

私はこの「看看連携」を通じて、日々葛藤しているクリニックの看護師さんがたくさんいることを知りました。学びたい気持ちはあってもスタッフそれぞれの事情も相まって、それを阻む要因もさまざまです。また、スタッフには勉強してほしい、新しい知識を得てほしいと思っているクリニックの医師がとても多いということも知りました。それで、私たちが出張勉強会を開いているというわけです。

大きな病院だけでは糖尿病診療は成り立ちません。患者さんが暮らしている地域のクリニックや訪問看護は非常に重要です。岡崎市で「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」が始まり、腎臓分野とも連携をしたいと思っていますが、クリニックでは検尿も難しく尿中微量アルブミン検査ができない現状があるんですね。病院とクリニックが連携して糖尿病患者さんを支えていくために、現場の声をもっと聞かなくてはいけないと思って訪問を続けています。

みんなで糖尿病患者さんを支えている

今後進めたいのは医科歯科連携です。歯周病は糖尿病の6番目の合併症といわれています。また、歯周病は糖尿病だけでなく心血管疾患、腎臓病、認知症などにも関連しているので、医科歯科連携はこれからますます重要になると思います。

実際、若くして歯を失っているたくさんの糖尿病患者さんをみているので、歯を失う前に介入できるようにしたいのです。歯を失うと噛み合わせがうまくできずに食事がやわらかいもの、うどんやおかゆなど糖質に偏りがちになります。また、肉や魚は咀嚼しにくいことから、タンパク質の摂取不足となり高齢者においてはサルコペニアにつながることも問題です。歯科受診をためらう患者さんに、どうしたら受診してもらえるようになるのか考えるのも課題です。

当院では歯科衛生士が糖尿病教室などで糖尿病患者さんに歯磨きの指導をしています。高齢者では加齢に伴い手指の巧緻性が低下していきますが、そのほかにも片麻痺など歯ブラシが持てないという患者さんに対しては、どうやったら歯磨きができるかをチームで考えています。インスリン注射もそうですね。麻痺がある場合はどうやって針を付けるか、補助具を使ったり、患者さんが無理なく注射を打てるようにスタッフで工夫します。チームで支援し、寄り添うことで患者さんがセルフケアを獲得し、行動変容する場に立ち会えることが何よりうれしい瞬間です。チーム医療、看護の醍醐味ですね。

(終わり)