KISSEI
糖尿病患者さんを
支える“ひと" シリーズ_第5回
糖尿病診療に携わるメディカルスタッフの方に、
患者さんの療養支援で心がけていることやコミュニケーションの取り方、
患者さんが受診したくなるような工夫、心に残った患者さんとのエピソードなど、
日頃の実臨床での様子を伺いました。
  • 竹輪 美里 たけわみさと さん

    株式会社はーと&はあとライフサポート 専属管理栄養士

竹輪さんって、こんな方

長崎県出身。小さいころから食べることが大好き。
人に食べることの楽しさ、すばらしさを伝えたくて、管理栄養士の道を目指す。
専門学校を卒業後、3年間の実務経験を経て管理栄養士資格を取得。
特別養護老人ホームにて栄養ケアマネジメントの立ち上げにたずさわる。
その後、株式会社はーと&はあとライフサポートに入社。
配食サービスを行っている、在宅食生活サポート事業にてカスタマーセンターで利用者対応を経験後、2019年より専属管理栄養士として、食事療法のためのサービス”栄養コントロール食”コースの利用者宅を直接訪問し、食生活のサポートを行っている。

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つねに糖尿病患者さんに寄り添って

ポジティブな変化がモチベーションを支える

これまでいろいろな糖尿病の方の食事をサポートしてきましたが、食事療法をいやいや始めた場合でも、HbA1cや血糖値が改善すると、その後もよい状態をキープされることが多いですね。

第一に、食事を変えて血糖値が下がると体がラクになります。加えて、数値が改善すると医師や看護師などから褒められるので「がんばってよかった」と嬉しくなる。そうしたポジティブな変化がモチベーションを支える原動力になるのではないでしょうか。

印象深いのは、「菓子パン、お餅、果物、お菓子が大好き」という80代の女性です。地域の訪問看護師さんから紹介を受け、暑い盛りの8月に面談をしました。当初は洗濯物を干そうとしても腕が上がらない状態で、「動くだけでしんどい」と言うほど。HbA1cは14.6%、血糖値も400 mg/dLを超えていました。

最初の面談で、開口一番「食べることが大好きだから、食事制限はしない」と言われました。でも、「今が、がんばりどきです。年末年始に大好きなお餅をまた食べられるよう、一緒に3カ月間がんばりましょう」とお話しし、糖尿病食の配食をベースにした食事療法を始めてもらうことになりました。

——そして、2カ月後。HbA1cは8%台まで低下しました。食事を変えると体調がみるみるよくなり、家事を再開、モーニングサービスにもご主人と一緒に行けるようになったのです。約束の3カ月が過ぎたころにはHbA1cが7%台前半まで下がりました。後日訪問すると、「あんなにいややと言ってしまって、ごめんね。あなたを信じてよかった」と言ってもらえました。現在は、配食を糖尿病食から普通食に切り替え、HbA1cも6%台後半をキープされています。

「実践しやすい・具体的な提案」が効く

食事を含めた行動変容に前向きに取り組んでもらうには、「実践しやすい、具体的な提案」をできるかが大事です。

例えば、「野菜をたくさん食べてください」と伝えても、その方が自分で料理をするのか、近所に食料品を買えるお店があるかなどの様々な背景を含めた実態に即した提案でないと意味がありません。さらに、料理をする方だったとしても、もう一歩踏み込み、近所のお店何軒かの商品をチェックしたうえで、「ここの冷凍コーナーには糖質カットのこんな商品があります。使ってみませんか」という具体的な提案をして、ようやく「それならできそうだな」という気持ちを引き出せます。

高齢の方から「病院で‟ヘモグロビンエーワンシー“が高いから気をつけてって言われたけど、どの数値のこと? どのくらいが正常なの」という質問をよく受けます。治療歴が長くても、案外そうした基本知識がない方は多いのです。こうしたときにも「わかりやすい」「実践しやすい」説明が効果的だと思っています。

HbA1cについて、私は先輩直伝のとっておきの覚え方を利用者さんへ紹介しています。それは、「HbA1cに30を足し、自分の体温に置き換える」というもの。HbA1cが8.4%の方には、「38.4 ℃の熱が出ているのと同じと考えてください。少ししんどいですよね」と説明すると、「それなら覚えやすい」とご自分のHbA1c値に関心をもってもらえるようになります。このように、できるだけ‟わかりやすい形で伝え、無理なく実践してもらう“工夫を心がけています。

利用者さんの情報は「見える化」して共有

在宅療養は、地域の医療・介護スタッフの方々と連携して支えているので、利用者さんの食事や生活の状況は「見える化」して、訪問看護師さんやケアマネジャーさんたちと共有しています。ツールには、当社が必要と考える項目にしぼってカスタマイズした「栄養アセスメント報告書」(下図)や既存の「MNA®」という低栄養評価表を活用し、訪問日、日々の食事内容、栄養状態などを記録して、サービス担当者会議などの場で共有しています。そして、「この方、おおまかな分類では低栄養に当てはまるので、あまり厳しい糖質制限はしないほうがいいです」など、その都度、情報を共有し、改善に役立ててもらっています。

(株式会社はーと&はあとライフサポートの許可を得て転載)

糖尿病の食事サポートは、やはり机上ではなく、実践しやすい具体的な提案をしてこそ効果が生まれます。

今後も、利用者さんお一人お一人の状況に応じた提案を第一に、糖尿病患者さんに寄り添った食事サポートをしていきたいと思っています。

(おわり)