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バスキュラーアクセス関連感染症とその対策/スタッフの観察と患者の自己チェックの継続が鍵

透析患者の3分の2は65歳以上の高齢者であり、10年を超える透析歴のある患者が27.8%まで増えています1)。こうした背景の中、透析患者の死亡原因の2位が感染症となり1)、中でもバスキュラーアクセス(VA)に関連する感染からの敗血症への進展が指摘されてきましたが、その実態は明らかではありませんでした。今回は、透析関連感染症のデータを約10年にわたり収集・解析した東葛クリニック病院看護部 部長の谷口弘美先生に、VA関連感染症のリスク因子や管理ポイントについて解説していただきました。
谷口 弘美 先生
特定医療法人財団 松圓会
東葛クリニック病院 看護部 部長

高齢化、長期透析者の増加により
重要性がさらに増した感染管理

透析患者は増加の一途をたどり、2017年末には33万人を超えました1)。近年は高齢化が進み、平均年齢は68.43歳、65歳以上の患者が約67%を占めています1)。長期透析の方も多く、10年、20年、中には40年の透析歴を持つ方もいます。そういう患者さんを私たちは毎日診ているのです。

一方で透析患者は、免疫力の低下、尿毒症、低栄養など様々な要因により感染症を発症しやすい状態にあります。患者の死因の第1位は心不全の24.0%ですが、第2位は感染症で21.1%です1)。また、透析導入後1年以内の死因をみると、感染症が25.9%と第1位です1)。感染症の内訳をみると、肺炎が46.1%と最も多く、次に多いのが敗血症で42.9%を占めています2)。バスキュラーアクセス(VA)から細菌が侵入して敗血症になっているケースが大半と思われます。感染症への予防対策が生命予後に影響をおよぼすため、透析医療の中で非常に重要な位置づけになっています。

VAの種類の中で最も多いのは内シャント(AVF)で、89.0%を占めています1)。次が人工血管(AVG)で7.3%、動脈表在化が1.7%、長期留置型静脈カテーテル1.3%、短期留置型静脈カテーテル0.3%という割合です1)。年齢別にみるとAVFの割合は年齢が高くなるほど低下しており、また透析歴が長いほど割合は低下しています1)。透析治療の長期化と患者の高齢化、さらに糖尿病の増加により、血管は透析開始前からすでに荒廃が進んでいると考えます。そのため頻回にアクセス作製を繰り返すことや、人工血管を使用する症例が増加しています。

感染率がやや高い長期留置型カテーテル
施設でも自宅でも清潔に管理を

表1:各バスキュラーアクセスの特徴
表2:アクセス別感染率と相互の比較

VAにはそれぞれ長所と短所がありますが、感染率に限ってみると、最も感染が起こりにくいのがAVFです(表1)。自己血管の動脈と静脈をつなぎ合わせるという最も生理的な方法だからです。動脈表在化は体内の深いところにある動脈を皮膚のすぐ下に移動させる手法なので、2番目に感染しにくいVAです。AVGの感染率はやや高くなっています。AVGでは人工血管を皮下に入れるので、皮膚の消毒が不十分だと付着した細菌に感染するリスクが高まります。

感染率が高いのは静脈カテーテルです。カテーテルは長期留置型カテーテルと短期留置型カテーテルがあります。感染経路としてはカテーテルの接続部と皮膚からのカテーテル出口部です。短期留置型カテーテル(非カフ型)は感染率が最も高いと言われています。挿入部位は屈曲がなく、最短で心房へ到達するという理由で右内頚静脈が第一選択になります。

カテーテルにカフがなく、皮下トンネルを形成しないためカテーテル出口部から細菌感染が起こりやすい状態といえます。内頸静脈への挿入が難しい場合には大腿静脈に挿入することもあり、その場合はさらに感染が起こりやすくなります。したがって、短期留置型カテーテルは挿入中の感染管理をし、3週間を越えないようにすることが重要です。

私たちは、VAに関連した感染症の頻度や起因菌の疫学と感染症発症のリスク因子を明らかにするために、2007年に透析関連感染サーべイランスシステムを構築しました。2008年3月から2017年12月までの蓄積データから同様のことが示されています。透析1,000回当たりのVA種類別感染率は、AVFが0.05、AVGが0.60、動脈表在化が0.16、長期留置型カテーテルが1.45、短期留置型カテーテルが9.17となっています(表2)。
したがって、VA関連感染症の対策はそれぞれの感染リスクを理解し、管理する施設の特長も考えて行う必要があります。

当院では保存期腎不全のとき、つまり透析導入前、外来でVAの作製やその管理について、患者さんにパンフレットを渡して指導を始めています。皮膚が乾燥している方が多いので、清潔に保つ、保湿剤で乾燥を防ぐ、痒くてもかき傷を作らないようにする、などの注意をします。そして透析導入後も引き続いて、VAの周辺の皮膚の状態を自分で観察する、痛みや腫れ、熱感、発赤などがあれば、すぐにスタッフに連絡するなど、こまめに注意を喚起しています。

AVG作製においては、上記に加え人工血管に沿って皮膚が赤くなるなど、AVG特有の兆候も説明します。予防については、腕を清潔にする、皮膚を良い状態に保つ、透析後当日は入浴しない、止血時に貼った絆創膏は透析の翌日にはがすなどの対策を指導しています。

当たり前のことを当たり前に管理する
穿刺の度に感染の兆候をこまめに観察

図1:感染兆候の早期発見バスキュラーアクセス全てにおいて

カテーテルの場合、スタッフによる管理が重要になってきます。カテーテルの感染対策として、当院では血液回路とカテーテルを接続する際に、看護師1名、臨床工学技士1名の2名体制で行います。カテーテルが皮膚から出ている部分を

「出口部」、血液回路と接続するカテーテルの末端を「接続部」と呼称を決め、出口部の皮膚の状態はどうか、接続部はどうかなど、スタッフが誰でも同じように状態を観察できるようにすることが大切です。

感染経路のひとつがカテーテルの出口部です。黄色ブドウ球菌など皮膚常在菌の感染のリスクがありますから、透析時に必ず消毒します。接続部分は透析専用のプラグをした状態でガーゼで保護されていますが、ガーゼが外れれば簡単に皮膚に触れてしまうので、カテーテルにアクセスする場面では、血液回路を接続する段階で必ず消毒します。

短期留置型カテーテルの場合はさらに感染管理は厳格に行っています。2週間以上留置する可能性のある場合(基準:ステロイド使用、人工呼吸器使用、カテーテル挿入部が鼠径部、医師が重症と判断、導入目的)は、カテーテルの出口部にクロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)を含有するテープを貼布しています。

VAの感染管理は毎日同じことの繰り返しですが、1人でも手抜きをしてしまうとそれが患者さんの命に関わると思っています。それには私自身の苦い経験があります。15年以上前のことですが、当時は珍しかった長期留置型カテーテルを入れている患者さんで、「急に発熱した。腰が痛い」と言って透析日ではない日に来院され、そのまま入院となり、2日後に亡くなられました。自宅で入浴し、カテーテルから菌が入って敗血症で亡くなったと考えられます。私はそのころ感染管理認定看護師の資格を持たず、まだ感染症のことが十分わかっていませんでした。カテーテルケアをちゃんと指導できていたか、自問し続けました。

VAの感染管理に王道はありません。患者さん自身がVAの状態に関心を持ち、ちょっとした変化があったらスタッフにすぐに伝えるよう、繰り返し注意喚起することが大切です(図1)。一方で、医療者もやるべきことはわかっているはずですが、ルーチン業務なだけにかえって抜けや漏れが生じがちです。穿刺の度にVAを観察し、聴診・触診を行い、その患者さんのいつものVAとは少し違うと感じたら、すぐに他のスタッフと一緒に対応を考える。こうしたことの継続が感染の早期発見につながり、最終的にはVAを長持ちさせ、患者さんのQOLを維持することにつながるのです。

1)透析会誌.51:699-766,2018.
2)Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial. 16: 226-231, 2012.

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